片目だけの白内障手術を行う場合、手術をしない目の焦点距離に合わせて眼内レンズを選択します。
遠視では広い範囲に焦点が合いやすいため、術眼を正視(視力1.0付近)にすることで手元からある程度遠くまで見ることができます。
しかし強度の近視のケースで術眼を正視にしてしまうと、視力に左右差が生じて生活に支障をきたします。
強度近視で片眼だけ、ピントはどこに合せればよいでしょうか?
なぜ、片眼だけ多焦点レンズにすると困るのでしょうか?
片目だけに多焦点レンズを入れる人は全体の5%ほどです。手元から遠くまでピントが合いやすいレンズなのになぜでしょうか?
それは次のような理由によります。
- 両眼挿入が前提で片眼では効果を感じにくい
- 保険適用外(レンズによっては先進医療が適用されるが手術は自費負担)
- 暗い場所で光を感じると眩しさや見えにくさがある
- 多焦点でも苦手な距離があるため人によっては眼鏡が必要
- 焦点調節に慣れるまで1か月ほどかかる
多焦点レンズを入れても視力がよくなる保障はありません。眼鏡を使えば単焦点レンズでも十分な場合も多く、多焦点レンズから単焦点レンズに入れ替える人もいます。
両目とも眼内レンズにすると快適な視力を得られる
片目だけに症状が出ても、両眼の検査を受けましょう。特に高齢者のかたはもう一方の目も白内障になっていることが多く、両眼とも眼内レンズにすれば見え方もグッとよくなります。
なお、両眼の手術には2つの方法があります。
- 片目ずつ手術
- 同時に手術
1週間を空けて左右別におこないます。その間は視力差が大きいため生活しにくいですが、最初のレンズの見え方に満足できない場合は、もう一方のレンズに変更するなど調整が可能です。
快適な視力が術後すぐに得られ、来院回数が減るため医療費も減らせます。しかし、見え方に満足できなくてもそれっきりで調整できません。
片眼だけ眼内レンズにする際の度数選び
度数の選択には3つのパターンがあります。
- 近視眼に合わせる
- 近視眼は矯正する
- わざと左右差をつける(モノビジョン)
手術をしないほうの目が近視だった場合にそちらに合わせます。
手術をしないほうの目が正視だった場合にそちらに合わせます。
視力の左右差に慣れている人に勧められる方法です。(一般的ではありません。)
また、術後に眼鏡やコンタクトレンズを使用する際にも注意が必要です。
眼鏡を使用する
手術をしない裸眼視力に度数を合わせて、術後は眼鏡で矯正します。視力の左右差が大きいと眼鏡で矯正できないからです。(眼鏡は度数が強くなると物が小さく見えるためです。)
コンタクトレンズを使用する場合の長所○と短所×
- 裸眼に合わせる(近視)
- コンタクトに合わせる(片眼のみ正視)
○花粉症や炎症のときは眼鏡も使える
○視力の左右差がないので疲れにくい
×近視矯正は必ず必要、将来的には老眼鏡も必要
○眼鏡がなくても遠くまで見える
○老眼になっても安い老眼鏡で十分
○眼鏡やコンタクトが使えないとき(災害・入浴など)も視力が確保できる
○もう片眼を手術することになれば両眼が正視に近くなる
×眼鏡は使えないので花粉症などのとき辛い
×視力の左右差が強く、裸眼は慣れが必要
術後の見え方をイメージした度数選び
眼内レンズを選ぶときは、手術をした人の体験談や見え方のイメージ画像を参考にすると良いでしょう。眼鏡のレンズを使って見え方のシュミレーションができる眼科もあります。
また老眼は、眼科検査の散瞳を想像してみてください。瞳孔が開くとピント調節ができず手元が見えにくくなります。
白内障をメインに扱う病院はとても混雑しています。そのため訊きたいことを事前にメモしておき、短い診察時間を有効に使いましょう。
術後に後悔しないためには年齢や持病、今後の生活を医師と話し合い、十分納得した上で度数を選ぶことが大切です。